われわれ全員が持っている天才的能力とは、生まれつき備わった、自分と自分を取りまく世界を向上させる力なのだ。『天才を考察する』「生まれか育ちか」論の嘘と本当。デイヴィッド・シェンク/著より引用。
以下の紹介内容は、下記より引用しています。
天才を考察する―「生まれか育ちか」論の嘘と本当
【参考】
『天才を考察する』
「生まれか育ちか」論の嘘と本当
デイヴィッド・シェンク/著
中島由華/訳
早川書房
それ以外の追加情報については、参照元を個別に記載します。
写真画像は、撮影した写真を使用しています。
遺伝因子は、環境因子「のかわりに」作用するのではなく、環境因子と相互に作用する。つまりG×Eである。
たしかに遺伝子の違いはある。だが、その違いはわれわれを抑えつける拘束具ではない。
親からの話しかけなどのプラスの環境因子が遺伝にもたらす影響、さらには人生にもたらす影響を積極的に活用するべきだろう。
現在わかっているプラスの環境因子の一部を挙げる。
●子供がごく幼いうちからたびたび話しかける
この環境因子はハートとリズリーの議論の余地のない調査によって発見され、ノースカロライナ大学の幼児教育プログラムによって裏づけられた。このプログラムは子供に出生直後から豊かな環境を提供するもので、これに参加した子供たちは対照群に比較して大きな進歩を示している。
●子供がごく幼いうちから本を読み聞かせる
2003年に行なわれた全国規模の調査で、親の教養レベルに関係なく、親が子供に本を読み聞かせることはプラスの影響があると報告された。2006年、同じような調査が行なわれ、本の読み聞かせに関して同じことが判明した。新しい方の調査は、人種、民族、階級、性別、出生順、早期教育、母親の教養、母親の言語能力、母親の温かみによる影響を除外して実施されている。
●養育と励まし
ハートとリズリーの発見では、平均して、専門職世帯の子供が出生後四年間に受ける励ましのフィードバックは、叱責のフィードバックよりも56万回多かった。労働者階級世帯の子供の場合、励ましのフィードバックの方が10万回多いだけだった。生活保護受給世帯の子供の場合、叱責のフィードバックのほうが12万5000回多かった。
●大きな期待を寄せる
シャーマンとキーの1932年の研究で、「子供は環境が要求するとおりに発達する」と判明している。
●失敗を受け入れる
いまや、コーチ、CEO、教師、親、心理学者は、自分の責任下にある者たちを限界およびその先へ駆り立てることの重要性を理解するようになっている。つまづきがあっても、生まれもった限界の兆候だなどとは考えず、学習の機会だとみなすべきである。
●「成長志向」を促す
スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドウェックは、能力は出生時から変わらないのではなく、伸ばすことが可能であると考える重要性について研究し、名声を得た。多くの研究で、能力は高められると考えるほど成功の可能性が大きくなることが示されている。
こういう環境因子の価値を認識する一方で、遺伝子の重要性を無視してはいけない。G×Eという新しい考え方では、環境の影響を認めることは遺伝子の重要性を認めることに等しいのだ。
本の読み聞かせは遺伝子を発現させる。話しかけは遺伝子を発現させる。助言を与えることは遺伝子を発現させる。
G×Eでは、知能はものではなくプロセスである。
学校で初めから成績のいい子供がいるのはどうしてだろう?子供のころ早く言葉を話しはじめ、早く成果を挙げていたうえ、成人してから創造的成功、経済的成功を収める人がいるのはどうして?
それは、誕生したその日から、そうなるべく訓練を積んでいるからなのだ。
スターンバーグ―知能研究の第一人者―は、一般大衆の前に立ちはだかる、知能の真の理解の妨げになっている壁を打ち破ることにした。
2005年、彼はつぎのように重々しく宣言した。
「知能とは、発達するさまざまな能力の集合である」
言いかえれば、知能は固定されていない。知能は普遍的ではない。知能はものではない。知能はいま、まさに展開しつづける動的プロセスなのだ。
この発見は、かつてミハイ・チクセントミハイの研究チームが実施した研究の結果にも一致している。彼らの結論では、
「学業成績がきわめて優秀である者は、かならずしも他者より『賢く』生まれついたわけではなく、他者よりよく勉強し、自己修養に励んだのである」。
われわれは、人間の知能を測るのは、テーブルの長さを測るようなものだと錯覚してしまうことがある。だがじつは、どちらかといえば五歳児の体重を測ることに似ている。測定した数値は今日だけのものだ。明日になればどれだけ増えているだろう?だいたいにおいて、それは当人しだい、そしてわれわれしだいなのだ。
エピジェネティクスに関して現在までに判明している事実は、ヒトの能力に関する動的システムのモデルにぴったりと符号する。
遺伝子は、われわれがどんな人間になるかを指図するものではなく、動的プロセスの主体である。遺伝子の発現のしかたは外部からもたらされる力によって調整される。
「遺伝形質」はさまざまな形であらわれる。われわれは、ずっと変わらない遺伝子と、変えることができる後成遺伝物質を受け継ぐ。それから、言語、思考、態度をも受け継ぐが、それらはあとから変えることができる。さらに、生態系をも受け継ぐが、それもあとから変えることができるのだ。
あらゆるものがわれわれを形づくり、われわれはあらゆるものを形づくる。
われわれ全員が持っている天才的能力とは、生まれつき備わった、自分と自分を取りまく世界を向上させる力なのだ。
以下の紹介内容は、下記より引用しています。
天才を考察する―「生まれか育ちか」論の嘘と本当
【参考】
『天才を考察する』
「生まれか育ちか」論の嘘と本当
デイヴィッド・シェンク/著
中島由華/訳
早川書房
それ以外の追加情報については、参照元を個別に記載します。
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