実際の幸せな経験と幸せかどうかの評価とには大きな違いがあります。多くの場合、人は意識を向けている何かで幸せを評価しています。しかしその評価とは別に長い人生や時間の中で多くの幸せな経験をしています。自他の幸せについて考えるとき、経験と評価は別物であると気づいていることは日常生活や人生においてとても役立ちます。
2022年3月9日 inner-wish
幸せな経験と評価の違いについて、ノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』より紹介しています。
以下の紹介内容は、すべて下記より抜粋・引用しています。
ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか?
【参考】
『ファスト&スロー』(下)
あなたの意思はどのように決まるか?
著者:ダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞者)
訳者:村井章子
出版:早川書房
画像は編集して作成しました。
内容から見出しを作成しました。
文章はすべて本文の一部を要約・抜粋・引用しています。掲載順は一部入れ替えています。
気分というものは、どんな瞬間でも、その人の気質や人生全体としてのしあわせ、ふしあわせに影響されるが、一日あるいは一週間の中での周期的変動もある。ある瞬間の気分は、主としてそのときの状況に左右される。カギを握るのは、注意の対象である。感情の状態は、そのとき何に注意を向けているかでおおむね決まってしまうからだ。
私たちは通常、そのときやっていることや目の前の状況に注意を集中する。だが、もちろん例外はある。主観的な経験の質が、その瞬間の行動ではなく、反復的な感情や思考で決定づけられるようなときがそうだ。だが通常の状態であれば、私たちはそのときの出来事に注意を向けていれば、そこから快楽や苦痛を感じる。たとえば食事から喜びを感じるには、食事に注意を向ける必要がある。
そのとき注意が向けられていた生活の一要素が、総合評価において不相応に大きな位置を占めることになる。これが「焦点錯覚(Focusing illusion)」である。焦点錯覚は、次の一文で表すことができる。
あなたがあることを考えているとき、人生においてそのこと以上に重要なことは存在しない。
焦点錯覚は、「見たものがすべて」効果の一種である。このケースで言えば、気候にばかり注意を払い、幸福を決める他の要因を見ようとしない。焦点錯覚はまた、その人の現在の幸福度のみならず、他人の幸福度や本人の将来の幸福度についてもまちがった評価をさせることがある。
焦点錯覚は誤った願望を生みやすく、とくに大きな買い物や環境の変化が将来の幸福に与える影響を過大評価しやすくなる。焦点錯覚は、たとえ最終的には魅力を失うものであっても、当初興奮したモノや経験の好感度を高めるというバイアスを生む。また持続時間を無視するため、長期的に関心を持ち続ける経験が、本来より低く評価されることになる。
ギャラップのデータでは、幸福の二つの面を比較することができる。
・実際に生活をしているときに経験する幸福感
・自分の生活を評価して下す総合的な判断
自分で設定する目標がその後の人生にやその後の幸福感にこれほど大きな影響を与えるとなれば、経験する自己の幸福感にだけ注目するのは筋が通らない、ということである。その人が何を望んでいるかを無視して、幸福だとか幸福でないとか言うことはできない。その一方で、生活の中で実際に感じる幸福感を無視して、生活全体を評価したときにどう感じるかだけに注目することも納得しがたい。私たちは、幸福の概念を複合的に捉える必要性を認め、二つの自己それぞれの幸福を考えるべきだろう。
経験する自己の生活は、瞬間の連続として表すのが論理的であり、一瞬一瞬にはそれぞれに価値がある。物語のエピソードは重要な瞬間に代表される。それは始まりとピークと終わりである。持続時間は無視される。脳は物語を扱うことには長けているが、時間をうまく処理できるようには設計されていないらしい。
人々の生活評価と実際の生活での経験は、関連性はあるとしても、やはり別物だということである。私は数年前に、生活満足度は、経験する自己の幸福計測値としては欠陥があると考えた。しかし実際には欠陥があるのではなく、まったく別のものだったのである。
以上の紹介内容は、すべて下記より抜粋・引用しています。
ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか?
【参考】
『ファスト&スロー』(下)
あなたの意思はどのように決まるか?
著者:ダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞者)
訳者:村井章子
出版:早川書房
画像は編集して作成しました。
内容から見出しを作成しました。
文章はすべて本文の一部を要約・抜粋・引用しています。掲載順は一部入れ替えています。
ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?
【参考】
『ファスト&スロー』(上)
あなたの意思はどのように決まるか?
著者:ダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞者)
訳者:村井章子
出版:早川書房
幸せは育てるものです。そして幸せは育てている期間の全てにあります。結果やゴールだけに幸せがあるのではありません。何かが実現するまで幸せになれないと思わないことです。
日常生活の変容については、長期計画でイメージすることが役に立ちます。毎日少しずつ継続して変容していくイメージを持てば、無理なく自然に幸せに変容プロセスが進み、段階的に大きな変容につながります。
意思決定力における直感と理性の働きについて、ノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』より紹介しています。