意思決定力を向上するためには、直感と理性の両方を向上する必要があります。直感は、知識・経験・練習・改善によって、スキルと共に向上できます。理性は、知識や能力を高め、常時チェックする仕組みによって、判断力と共に向上できます。さらに認知的エラーの兆候を見落とさず、思考をスローダウンさせ、注意深く判断・選択することも大切です。
2022年3月9日 inner-wish
意思決定力における直感と理性の働きについて、ノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』より紹介しています。
以下の紹介内容は、すべて下記より抜粋・引用しています。
ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか?
【参考】
『ファスト&スロー』(下)
あなたの意思はどのように決まるか?
著者:ダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞者)
訳者:村井章子
出版:早川書房
画像は編集して作成しました。
内容から見出しを作成しました。
文章はすべて本文の一部を要約・抜粋・引用しています。掲載順は一部入れ替えています。
本書では脳の働きを二つの架空のキャラクターの複雑な相互作用として説明した・自動的に働くシステム1と、努力を要するシステム2である。
私たちの考える自分自身とは、注意深いシステム2のことである。システム2は判断を下し、選択を行う。しかしシステム2はしばしば、システム1が形成した考えや感覚をそのまま承認したり、いくらか修正を加えただけでゴーサインを出したりする。
とはいえシステム2は、システム1の単なる庇護者ではない。多くのばかげた考えや不適切な衝動があからさまに外へ出てしまうことを防ぐ役割も、ちゃんと果たしている。
ところがシステム2の能力は限られており、アクセスできる知識も限られている。私たちの思考はつねに理路整然としているわけではないのだから、出しゃばりの不正確な直感ばかりが判断ミスの原因ではない。私たちがひんぱんに誤りを犯すのは、システム2の知識や能力不足が原因でもある。
私たちが犯す誤りの大半はシステム1に端を発するとはいえ、私たちが行う正しいことの大半もシステム1のおかげなのだし、しかも私たちがやることの大半は、そうまちがってはいないのである。
とりわけ驚嘆に値することの一つは、じつにゆたかで詳細な現実世界モデルが連想記憶の中に維持されていることである。
おかげで、連想記憶は通常の出来事と予想外の出来事とを数分の1秒で選別し、その出来事について何を予想していたのかを瞬時に思い浮かべ、予想外のことと本来起きるはずだったことについて、因果関係を自動的に探すことができる。
記憶にはまた、私たちが生まれてこのかた習得してきた幅広いスキルも蓄えられており、直面した難問に対して自動的に的確な解決を示してくれる。
こうしたスキルを習得するには、安定した環境と練習や実践を繰り返す機会が確保され、それに対して迅速かつ明快なフィードバックが得られることが望ましい。こうした条件が満たされれば、スキルは開発され、身につき、ぱっと思い浮かぶ直感的な判断や選択の大半が的確なものになるだろう。
これらはすべてシステム1の働きによるため、自動的かつ瞬時に行われる。膨大な情報をすばやく効率的に処理できる能力は、高度なスキルが身についていることの証と言える。
スキルを持ち合わせていない場合はどうなるのか。システム2を呼び出さねばならないことはすぐわかる。だがシステム1が立ち往生することはめったいない。システム1は能力の限界などものともせず、難問に遭遇するとあの手この手で対処する。
難しい質問の答えを探すときには、ただちに似たような質問の答を探し、容易に思い浮かんだほうの答でもって本来の質問の答に置き換える。これがヒューリスティックであう。このように手っ取り早い近道から出てきた答は、本来の質問の答よりシンプルだったり賢明だったりするわけではないが、とにかく入手しやすく、短時間で簡単にもとめられるという絶大な利点がある。ヒューリスティックな答はけっしてでたらめではなく、大体においておおむね正しい。しかしときには決定的に間違っている。
システム1に起因するエラーを防ぐ方法は、原理的には簡単である。認知的な地雷原に自分が入り込んでいる兆候を見落とさず、思考をスローダウンさせ、システム2の応援を求めればよい。だが残念ながら、最も必要なときに限って、こうした賢明な手段はめったに講じられないものである。
重大な誤りを犯しそうになったら警報ブザーが鳴り響いてくれるとありがたいものだが、人間にはそうしたブザーは備わっていない。
しかも認知的的錯覚は、おおむね知覚的錯覚よりも気づきにくい。まちがった直感の声は大きくてよく通り、理性の声は小さくて聞き取りにくい。それに、重大な意思決定という重圧に直面しているときに、自分の直感を疑うのはまことに不快である。トラブルの渦中にあるときに自分の直感を吟味するなど、誰がやりたいだろうか。
それに引き換え、他人が地雷原に迷いこもうとしているときにそれを指摘するのは、自分の場合よりはるかに簡単である。側から見ている第三者は認知的に多忙ではないし、当人より情報を受け入れる余地が大きいからだ。
以上の紹介内容は、すべて下記より抜粋・引用しています。
ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか?
【参考】
『ファスト&スロー』(下)
あなたの意思はどのように決まるか?
著者:ダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞者)
訳者:村井章子
出版:早川書房
画像は編集して作成しました。
内容から見出しを作成しました。
文章はすべて本文の一部を要約・抜粋・引用しています。掲載順は一部入れ替えています。
ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?
【参考】
『ファスト&スロー』(上)
あなたの意思はどのように決まるか?
著者:ダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞者)
訳者:村井章子
出版:早川書房
「直感」の中に間違えることがあるというのは、「直感」と思っているけど、実際には自分の「顕在意識」での希望的観測を「直感」と自分で思ってしまっているからです。つまり自我とか欲望が働いている場合を自分で「直感」と誤解してしまうことがあるのです。「これは自分は自分のことだけを考えて、自分だけがメリットがあるからやろうとしているのか」というチェックがいつも必要です。
詳しくはコチラ>
これからの多様化する社会で、個性が異なる多くの人間が協力しあうには、理性と直観を鍛えること、適応学習による小さな改善・ビジョン・進化する知識が役立つと言われています。『決断科学のすすめ』より紹介。
平和は育て続けるものです。私たちは長い歴史の中で、経験・反省・学習を繰り返し、平和を育てています。心の平和も、身近な平和も、遠くの平和も、試行錯誤しながら平和を育て続けるものだと思います。
崖の上、すなわち利他性、共感、誠実、敬意、関与の良い面に立つときは、しっかりと地に足をつけて、踏みはずしたらどうなるか十分に認識しているはずです。この認識が、自らの価値観に則って行動しようという決意と、誤りは犯しやすいものだという謙虚さの両方を強固にしてくれます。Compassion(コンパッション:日本語では一般的に「慈悲」「思いやり」などと訳される)について、ジョアン・ハリファックス博士の著書『Compassion』より引用しています。
実際の幸せな経験と幸せかどうかの評価とには大きな違いがあります。幸せな経験と評価の違いについて、ノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』より紹介しています。