色々な問題の共通基盤要因となる「身体予算バランス管理」の重要性と方法について、『情動はこうしてつくられる──脳の隠れた働きと構成主義的情動理論』リサ・フェルドマン・バレット (著)の引用と共に説明しています。
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多くの悩みやストレスで心身の不調を感じた時、心の問題に取り組んだり、外部の環境を変えるより前に、身体予算管理のバランスを取り戻す必要があります。
身体予算のバランスが崩れたままで、色々な方法に取り組んでも、なかなか改善に結びつかないことが多いからです。
色々な問題の共通の基盤要因として「身体予算バランス」を最初に見直すことをオススメします。食事・運動・睡眠等、基本的生活習慣の見直しは必須ですが、不安に煽られ続けるなど強い感情や思考に翻弄されることは、身体エネルギーを大量に浪費するため、思考や感情の暴走を止めるよう注意しましょう。身体予算バランス管理のためにはエネルギー収支について意識することが大切です。
2020年2月26日 inner-wish
以下の紹介内容は、すべて下記より抜粋・引用しています。
『情動はこうしてつくられる──脳の隠れた働きと構成主義的情動理論』リサ・フェルドマン・バレット (著)
【参考】
『情動はこうしてつくられる──脳の隠れた働きと構成主義的情動理論』
リサ・フェルドマン・バレット (著)
高橋 洋 (翻訳)
出版社: 紀伊國屋書店 (2019/10/31)
画像はフリー素材を編集して作成しました。
小見出しは内容から作成しました。
身体予算管理領域は、生存に重要な役割を果たす。脳が、内部であろうが外部であろうが身体のいかなる部位を動かすときにも、ある程度のエネルギー資源が消費される。エネルギーは、さまざまな内臓器官、代謝、免疫系の機能を維持するために使われる。身体資源は、食べる、飲む、眠ることで補給され、また身体エネルギー消費量は、近しい人々とリラックスすることで低減する。
これらすべての消費や補給を管理するために、脳はつねに、身体の予算を立てるかのごとく、身体のエネルギー需要を予測しなければならない。そのために、企業が会社全体の予算運用のバランスを保つべく、預金や引き出し、あるいは口座間での資金の移動を管理する経理課を設置しているように、脳は身体の予算管理の責任を負う神経回路を設置している。この神経回路は、内受容ネットワーク内に存在する。かくして身体予算管理領域は、過去の経験を指針として予測を行ない、無事に生きていくのに必要な資源の量を見積もるのだ。
情動を手なづけるためのもっとも基本的な手段は、身体予算を良好な状態に保つことである。内受容ネットワークは、日夜予測を発して身体予算を健全な状態に保とうとすること、そしてこの過程が感情(快、不快、興奮、落ち着き)の源をなすことを思い出してほしい。
良好な気分を維持したいのなら、心拍、呼吸、血圧、体温、ホルモン、代謝などに関する脳の予測は、身体のニーズに合致していなければならない。さもなければ身体予算の管理が破綻し、いくら自己啓発書を読んでまじめに従っても、気分の悪さはどうにも改善されないだろう。
常時ひどい気分が続くと、人は自分で治そうとする。アメリカで消費されている薬の30パーセントは、何らかの形態の苦痛に対処するために服用されている。そのような人にとって、予測は恒常的に、身体の支出と合っていない。おそらく、身体が必要としている費用を、脳が正しく見積もっていないからであろう。だから彼らは、気分が悪くなって薬を服用するか、アルコールやドラッグに手を出すようになるのだ。これが悪いニュースなのは言うまでもない。
では、予測を的確に調整し、身体予算のバランスをとるために何ができるのだろうか?唐突に母親めいた指南をすると、それにはまず、健康的な食事をし、運動を欠かさず、十分に睡眠をとることだ。
ありきたりなことは承知のうえだが、残念ながら、生物学的に言ってそれに代わる方法はない。
身体予算は財政予算と同様、確たる基盤があればたやすく維持できる。乳児の頃は保護者が身体予算の面倒をすべてみてくれるが、成長するにつれ、その責任は徐々に本人が持つようになる。友人や親がアドバイスしてくれることもあるだろうが、栄養面の面倒は自分で見なければならない。だから自分で努力して、野菜を食べ、精製糖や質の悪い脂肪を控え、定期的に運動し、十分に睡眠をとるようにしよう。
このアドバイスは、普段の生活様式や習慣を大幅に変えない限り、実践不可能に思えるかもしれない。ジャンクフードを控える、テレビを見過ぎないようにするなど、現代文化の誘惑をどうしても振り払えない人がいる。あるいは、家計のやりくりに苦労している人には、生活様式を変えることは難しいかもしれない。しかし、やれることはやろう。
健康的な食事、定期的な運動、十分な睡眠が、バランスのとれた身体予算が健康な情動生活の前提条件であることは、科学によってはっきりと示されている。次章で検討するように、身体予算に慢性的に負担がかかっていると、さまざまな病気にかかりやすくなる。
痛みやストレスなどの現象、あるいは慢性疼痛、慢性ストレス、不安障害、うつ病などの病気は、通常考えられている以上に関連しており、情動と同様な様相で構築されるという点を見ていく。この見方を理解するカギは、予測する脳と身体予算について正しく把握することになる。
身体予算のバランスは、脳の予測がひどくはずれると失われる。このような事態は普段でもよく起こる。上司やコーチと話をするとき、担任の先生がこっちに向かって来るときなど、心理的に何か意味のあるできごとが起こると、脳は、誤って燃料が必要だと予測し、それによって生存のための神経回路が活性化される。すると身体予算に影響が及ぶ。一般に、その種の短期的なバランスの乱れは、引き出した分を食事や睡眠で補える限り、心配には及ばない。
とはいえバランスの乱れが長引くと、体内の活動は悪化する。脳は、身体がエネルギーを必要としているという誤った予測を繰り返して発し、身体予算を赤字にする。身体予算の誤った割り当てが慢性化すると健康が劇的に損なわれ、免疫系の一部である身体の「借金取り」が呼び出される。
ストレスは、たとえば五つの仕事を同時にこなそうとしているとき、明日までに仕事を完成させるよう上司に指示されたとき、親しい人を失った時などに起こると、読者は考えているかもしれない。しかし、ストレスは外界からやって来るのではなく、自分が作り出すのだ。
ストレスには、学校で未知の分野を学習する難題に直面したときなどの前向きなものもあれば、親友と喧嘩したときなど、後ろ向きではあっても我慢できるものもある。あるいは、長引く貧困、虐待、孤独などに起因する、慢性的で有害なストレスもある。言い換えると、ストレスは多様なインスタンスの集合であり、「幸福」や「怖れ」と同じく一つの概念と見なすことができる。そしてこの概念は、バランスを欠いた身体予算から経験を構築する際に適用される。
ストレスのインスタンスは、情動を生成するものと同じ脳のメカニズムによって生成される。いずれの場合にも、脳は外界との関係において身体予算に関する予測を発し、意味を作り出す。
予測は、内受容ネットワークによって発せられ、同じ経路を介して脳から身体へと伝えられる。また身体からの感覚入力を脳に伝える逆方向の経験も、ストレスと情動で同じものが用いられる。そして内受容ネットワークとコントロールネットワークという二つのネットワークが、ストレスと情動に関して同一の役割を果たしている。
心の知能が高いがん患者は、炎症生サイトカインのレベルが低いらしい。いくつかの研究によれば、頻繁に自分の情動を分類する、言葉で示す、理解する、と答えた患者は、前立腺癌からの回復時や、ストレスに満ちたできごとのあと、サイトカインレベルの上昇があまり見られない。
また、体内を循環するサイトカインのレベルがもっとも高いのは、自分自身では言葉で示せない、さまざまな気分を報告した男性においてであった。
自分の情動をはっきりと表現し理解できている乳がん患者は、より健康で、がん関連の症状のために通院することが少ない。これらの事実は、「内受容感覚を情動としてうまく分類できる人は、健康の悪化につながる慢性的な炎症に対して、しっかり保護されている」ことを意味する。
社会が身体予算のバランスを欠いた人々を多数抱え込むようになれば、数十億ドルにのぼる医療費の負担がかかるばかりでなく、人々の健康、人間関係、そして生命にさえ悪影響が及ぶ。これらの疾病の研究者は、「不安障害」「うつ病」「慢性疼痛」などのカテゴリーを生む本質主義を捨て去り、共通の基盤要因を探し始めている。
思うに、基盤要因の項目に内受容、身体予算、情動概念を加えれば、不安障害、うつ病、慢性疼痛などの消耗性疾患の治療がもっと進展するだろう。それとともに、共通要因に関する知識は病気を回復するために、また担当医師との効率的な話し合いにも役立つはずだ。
私たちは皆、世界と心のあいだ、そして自然と社会のあいだを綱渡りしながら歩んでいる。
うつ病、不安障害、ストレス、慢性疼痛など、これまで純粋に心の問題と考えられていた障害の多くは、実のところ生物学的な用語で説明できる。また、痛みなどの純粋に身体的なものと見なされてきた障害は、同時に心的概念でもあることがわかってきた。
熟達した自己の経験の建築家になるためには、身体的現実と社会的現実を区別し、二つが決定的にからみ合っていることを理解しつつも、それらを取り違えないよう留意する必要がある。
以上の紹介内容は、すべて下記より抜粋・引用しています。
『情動はこうしてつくられる──脳の隠れた働きと構成主義的情動理論』リサ・フェルドマン・バレット (著)
【参考】
『情動はこうしてつくられる──脳の隠れた働きと構成主義的情動理論』
リサ・フェルドマン・バレット (著)
高橋 洋 (翻訳)
出版社: 紀伊國屋書店 (2019/10/31)
画像はフリー素材を編集して作成しました。
小見出しは内容から作成しました。
日常に必要な身体エネルギーは、毎日の食事・運動・睡眠で賄われています。これは、通常の日常生活を送るのに困らない量の身体エネルギーを生成し続ける必要があるということです。
ストレスが健康不良の一因になっている可能性を報告している臨床試験は優に100件を超えていることから、多くの研究者が、体に大きな負担となる生活習慣は、自己免疫疾患やがんなど、あらゆる病気のリスクを上昇させる可能性があると考えている。
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語彙の粒度がきめ細かくなればなるほど、脳は予測するにあたり、それだけ正確に身体予算を身体のニーズに合わせられるようになる。事実、きめ細かな情動粒度を示す人は、医者や薬の世話になることが少ない。
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