センス・オブ・ワンダーのつながり
『センス・オブ・ワンダー』の本を読んだ日から「センス・オブ・ワンダー」の共振を実感した日までの親子3代にわたる「蒔いた種は芽を出す」お話です。
始まりは記憶の中から
長女とは本の貸し借りをすることが多いのですが、前回貸してくれた本の1冊が『センス・オブ・ワンダー』という2021年に出版された文庫本でした。
ちょっとしたきっかけがあり読み始めると、「この本は読んだことがある!」という記憶の彼方から蘇る感覚がありました。
タイトルも言葉も覚えていなかったのに、読み始めた途端「センス・オブ・ワンダー」の感覚が蘇ったのです。
センス・オブ・ワンダーの本
私が25年以上前に読んだのは、1996年に出版された単行本でした。
原作「The Sence of Wonder」は1956年「あなたの子どもに驚異の目をみはらせよう」と題して雑誌に掲載されたものだそうです。
著者のレイチェル・カーソンはアメリカの大ベストセラー作家であり海洋生物学者でもありました。
『センス・オブ・ワンダー』は著者のレイチェル・カーソンが甥のロジャーと一緒に海辺や森の中を探検し、星空や夜の海をながめた経験をもとに書かれた作品です。
センス・オブ・ワンダーとは
「センス・オブ・ワンダー」について著者のレイチェル・カーソンは次のように説明しています。
『不思議さに驚嘆する感性――「センス・オブ・ワンダー」は、生涯を通じて持続するものである』
『人間を超えた存在を認識し、おそれ、驚嘆する感性をはぐくみ強めていくことには、どのような意義があるのでしょうか』『わたしはそのなかに、永続的で意義深いなにかがあると信じています』
『地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう。たとえ生活のなかで苦しみや心配ごとにであったとしても、かならずや、内面的な満足感と、生きていることへの新たなよろこびへ通じる小道を見つけだすことができると信じています。』
『地球の美しさについて深く思いをめぐらせる人は、生命の終わりの瞬間まで、生き生きとした精神力をたもちつづけることができるでしょう。』
子どもたちのセンス・オブ・ワンダー
『子どもたちの世界は、いつも生き生きとしていて新鮮で美しく、驚きと感激にみちあふれています。残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに澄み切った洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。』
『美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものにふれたたときの感激、思いやり、憐れみ、賛嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとたびよびさまされると、次はその対象となるものをもっとよく知りたいと思うようになります。そのようにして見つけだした知識は、しっかりと身につきます。』
共に感じること
『生まれつきそなわっている子どもの「センス・オブ・ワンダー」をいつも新鮮にたもちつづけるためには、わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもと一緒に再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる必要があります。』
『たとえば、子どもと一緒に空を見上げてみましょう。そこには夜明けや黄昏の美しさがあり、流れる雲、夜明けにまたたく星があります。子どもといっしょに風の音をきくこともできます。』
『子どもといっしょに自然を探究するということは、まわりにあるすべてのものに対するあなた自身の感受性にみがきをかけるということです。』
受け継がれる種
私は二人の娘と手を繋いで保育園の送り迎えをする時、一緒に自然を発見し、共に感じる日々を合計12年間過ごしました。
それは母と手をつないで散歩した記憶が残っていたからでもあります。センス・オブ・ワンダーを読んだ時、最初にその記憶が蘇りました。
母と手をつないで夕方に眺めた夕日の大きさや満月の美しさは、今でも鮮明に覚えています。また手をつないで「つくし」や「ぜんまい」を探したことも懐かしく覚えているのです。この母との記憶が、自然に娘たちと手をつないで自然を感じる日々につながったのだと思います。
そうやって育ててきた長女から『センス・オブ・ワンダー』の本を勧められたのです。25年以上前に蒔いた種は芽を出し育っていました。
良い種を蒔き育て続ける
このように経験や知識は良い種として蒔かれ、大きく育ち、次に蒔かれる種を育てるのだと思います。
母は、私が幼い頃は経験を与え、大学時代にはモンテッソーリ教育の知識も種として蒔いてくれました。私は母からの経験と知識に加え、「センス・オブ・ワンダー」の感覚や、教育大で学んだ知識を、その時々の種として娘に蒔いたのだと思います。
長女は幼児〜高校まで教える資格を持っていて、今は幼児教育に携わっているのですが「センス・オブ・ワンダー」も意識しているそうです。
教えた子どもたちもまた、多くの種を蒔くことになるでしょう。これはセンス・オブ・ワンダーの種を「次世代につなげる」ということです。
センス・オブ・ワンダーの共振
先日、あしかがフラワーパークに行った時、満開の大藤を歩きながら眺めている時のこと。海外からの観光客も多く、色々な国の言葉が飛び交う中、言葉ではなく「センス・オブ・ワンダーの響き」を感じました。
『美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものにふれたたときの感激』が藤の香りと共にその場を圧倒する響きとなって溢れていました。それは国境や言葉を超える「驚嘆する感性の響き」でした。
混雑は苦手なのですが、この日は多くの人々と一緒に「センス・オブ・ワンダー」のつながりを「共振」として実感した日だったのです。
『センス・オブ・ワンダー』の本を読み返したおかげで、「私が感じた圧倒的な感覚の共振はこれだ!」と言葉にすることできました。
2023年4月26日更新NEW!↓
↑あしかがフラワーパークの紹介を追記しました。
日常生活の中で
日常生活の中でも、一人でも、「センス・オブ・ワンダー」を実感して生きることはできます。
『自然にふれるという終わりのないよろこびは、けっして科学者だけのものではありません。大地と海と空、そして、そこに住む驚きに満ちた生命の輝きのもとに身をおくすべての人が手にいれられるものなのです。』
また、自分の娘に限らず、子どもと共に自然を感じる時、自然と子どもと自分が一つになったように感じることがあります。子どもだけでなく、誰かと自然の中で一つにつながったように感じることもあります。
身近にいる誰かと、あるいは自然を共に感じている見知らぬ誰かと、「センス・オブ・ワンダーのつながり」を感じる時、「命の輝きの中に共に存在する実感」があると思います。
以上の『』は下記から引用しています。
●センス・オブ・ワンダー (新潮文庫) ペーパーバック – 2021/8/30
【引用元】
出版社 : 新潮社; 文庫版発売日 : 2021/8/30
言語 : 日本語
著者:レイチェル・カーソン
翻訳:上遠 恵子
inner-wish補足
センス・オブ・ワンダーのきっかけ
記憶の彼方から蘇るきっかけとなったのは、長女が別の本についてLINEを送ってきた著者の名前でした。「福岡伸一」という名前に見覚えがあったのです。長女も私も「どこかの本の中で見たことがある」と話し合ったのですがその時は思い出せませんでした。
ところが数日たったある日、突然、記憶の中から『センス・オブ・ワンダー』の本の中で書評を書いている人だと思い出しました。そして、その本は長女から借りていて本棚にあることを思い出し、読み始めたのです。すると「25年以上も前に読んだことがある本だ」ということが、また記憶の彼方から思い出され・・・という流れでした。
分子生物学者の「福岡伸一」さんは、本書の中で「センス・オブ・ワンダー。私の一番好きな言葉である」と書いていらっしゃいます。またセンス・オブ・ワンダーに関する著書も多く、センス・オブ・ワンダーについて伝えたいお気持ちを種として蒔いていらっしゃるのだと感じました。その種が私たちの中に芽を出したのではないかと思います。
いろいろ思い出したこの日は、あしかがフラワーパークで感じた素晴らしい感覚を、何とか文章にできないかと悩んでいた日でした。きっと、その答えが、導き出されたのだと思います。
それまではブログにするかどうか迷っていたけれど、「センス・オブ・ワンダー」という言葉とつながったので、「これは書いた方がいい」「必ず良い種になる」と確信をもつことができました。
『センス・オブ・ワンダー』の文庫本の帯には、「地球の声に、耳を澄ませて。子どもたちに持続可能な社会を遺すために。いまこそ読みたい世界的ベストセラー!」と書かれています。
自然の美しさや宇宙の神秘に驚嘆する感性を育て続けること、共に感じ続けることは、「すべき」というより「大きな喜び」につながることだと思います。自然を共に感じながら、喜び合いながら、地球を大切に守って行けるよう願っています。
多くの人に「センス・オブ・ワンダー」の種が広がり、地球環境にとって良い結果となりますよう心よりお祈りしています。
2023年4月26日更新 inner-wish
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2024年1月25日更新NEW!
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