共感の崖と身体的共感について、ジョアン・ハリファックス博士の著書『Compassion』より引用しています。
以下の紹介内容は、すべて下記より抜粋・引用しています。
Compassion(コンパッション)―状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く、「共にいる」力
【参考】
『Compassion(コンパッション)』
―状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く、「共にいる」力
ジョアン・ハリファックス (著)
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート(監修)
海野 桂 (訳)
出版社:英治出版 (2020/4/6)
画像はフリー素材を使用して編集しています。
小見出しは掲載されている見出しを使用しました。
文章はすべて本文の一部を抜粋・引用しています。
共感は、言葉の由来のとおり、「他者の内面を感じること」です。一方、コンパッションは、「他者のために感じること」であり、他者に恩恵をもたらす行動を起こしたいと切望する気持ちをともないます。多くの場合共感はコンパッションの前兆であり、コンパッションの一部ですが、コンパッションではありません。
共感が良い状態であるためには度を越さないよう適度に保たねばならないのに対して、コンパッションは、過剰になることはありません。
コンパッションは力の源として、私たちの意欲を支え他者に恩恵をもたらします。そして、一方の共感も、人間性の基本となる不可欠な特性です。共感がなければ、私たちの人生は排他的で狭いものとなり、さらには自己陶酔や唯我論的姿勢にいたります。共感があれば、自意識を脇に置いて世界を広げることができますし、想像力が私たちを豊かにするのです。
共感という能力の本質は、他者の経験に同調し、それを自らに取り入れ、理解し、一体化することです。
共感的になるというのは、他者の感情を内面で共有するだけではありません。人は他者の肉体が経験していることや、他者が何をどう認知しているかについても、共鳴し合うことができるのです。私は共感には、身体的共感、情動的共感、認知的共感の三つがあると考えています。
社会心理学者は、このうち情動的共感と認知的共感を重視します。しかし、私は瞑想実践と対人支援の経験から、身体的共感も可能であることを目の当たりにしてきました。そしてこの分野の研究も増えつつあるのです。
「身体的共感」とは、他者の肉体的な感覚と強く共鳴し合うことです。
ジョエル・サリナス博士はマサチューセッツ総合病院の神経学者で、「ミラータッチ共感覚」と言われる感覚を持っており、他者の身体が経験していることをはっきりと感じることができます。研究者のマイケル・バニシーとジェイミー・ウォードによると、ミラータッチ共感覚者の脳は、社会的認知(対人関係や社会的出来事の認知)および共感に関する部位の灰白質が大きい一方、自分と他者の識別能力に関する部位が小さいそうです。他者の身体感覚を自分のことのように感じて、容易に呑み込まれてしまうというミラータッチ共感覚者の感覚に照らすと、腑に落ちます。
ジョエル・サリナス博士は、彼の患者が体験する身体的感覚に圧倒されないようにするために、自らの呼吸の流れに意識を向けて、自分を落ち着かせることを習得しました。また、医師としての自分の役割を思い出し、他者に役立つという目的を心に留めるようにしました。感覚の高まりをコントロールする方法として、他者と自分を鏡おように重ね合わせてるときの感じ方と、自分への通常の刺激に反応するときの感じ方の、微妙な違いにも気づくようになりました。感覚をメタ認知することで、他人の身になったときに感じる身体的感覚は過ぎ去っていくものだと気付いたのです。
ニュートラルな人や物に意識を向けることもありました。こうして、彼は鏡のように身体が共鳴する自らの体験を、患者のためにいかに役立てるかを考えるようになりました。
身体的な同調は、他者を理解しケアを施すための手段となります。しかし、肉体的な痛みに苦しむ相手との一体化は度を過ぎると、他者の苦痛に自らが脅かされる恐怖を感じることになり、膨大な知覚情報に溺れてしまいかねません。そうなると、すべて放り出すか、完全に閉め出すしかなくなり、苦しみによる圧迫から逃れて自らをきつく閉ざし、ある種閉じこもるようなかたちで、自らを守ることになります。
極端な過敏さと、その対極である他者に対する無感覚・無関心のあいだにある、中庸の道をいかに見つけられるかが重要だということです。また、「背筋をしっかり、体の前傾(おなか)を柔らかく」しておくことも大切です。これは精神的な落ち着きとコンパッションの双方を併せ持つ状態を身体的に表したもので、他者の身体的な経験に寄り添い、それを取り込み、そして手放す際に、大きな助けとなるでしょう。
以上の紹介内容は、すべて下記より抜粋・引用しています。
Compassion(コンパッション)―状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く、「共にいる」力
【参考】
『Compassion(コンパッション)』
―状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く、「共にいる」力
ジョアン・ハリファックス (著)
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート(監修)
海野 桂 (訳)
出版社:英治出版 (2020/4/6)
画像はフリー素材を使用して編集しています。
小見出しは掲載されている見出しを使用しました。
文章はすべて本文の一部を抜粋・引用しています。
Compassion(コンパッション:日本語では一般的に「慈悲」「思いやり」などと訳される)について、ジョアン・ハリファックス博士の著書『Compassion』より引用しています。
HSC(人一倍敏感な子)・HSP(人一倍敏感な人)のチェックリスト等を『ひといちばい敏感な子』(エレイン・N・アーロン著)より紹介しています。また、エンパス(共感力者)のタイプについても紹介しています。
2022年11月24日更新NEW!
『身体のコミュニケーション〜無意識性を探る』という30年前の卒業論文を掲載した理由は、「無意識の情報交換」がインナーウィッシュにとって重要なテーマだからです。続きを読む(inner-wish補足)
真の穏やかさや、優しさは調和のとれた「程よい」状態でバランスをとることの中にあります。『中庸』とは「偏らず、過不足なく、極端に走らない人間の徳」です。『中道』とは「両極端に偏らない悟り・涅槃へ至る道」です。
ニュートラルな心の状態をデフォルト(標準の状態)に保つ習慣がついていると、心が静まっているため、わずかな変化に気付きやすくなります。心が大きく揺れ動くことが減り、一定の安定した心の状態を保てるようになります。たとえ、感情が揺れ動いても、ニュートラルな状態に戻しやすくなるのです。
心の状態を穏やかに安定させるためには、不安定な状態に愛と思いやりをプラスすることです。思いやりとは自分や誰かにその愛を向けることです。まず自分から愛で満たし、溢れた愛を周囲に浸透させましょう。しばらくすると自他共に穏やかな状態になります。